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カリフォルニアに秋がやってきました。日差しは相変わらずでも、吹く風がさわやかで、ビーチサンダルにタンクトップという定番スタイルも、さすがに街中から消えつつあります。と同時に、昼間でも外で体を動かす人の姿が多くなっていることに気づきました。まさしくロサンゼルスの秋は、スポーツのシーズンです！というわけで、趣味のジョギングを再開してみたのですが、気づいたのは、道路のコンディションの悪さ。とくに歩行者にとっては最悪で、足元に気をつけていないと、いつつまずいて転ぶかわかりません。ロサンゼルスはもともと、道を歩いている人が極端に少ないのです。だだっぴろい街は、移動距離が半端ではなく、どこに行くのも車。市街地でジョギングすると、排気ガスで息苦しく、走れば走るほど体に毒がたまりそうです。そこで、サンタモニカに行った時にビーチ沿いをたくさんの人が走っていたのを思い出し、最寄のビーチに行ってみることにしました。
すると、いるわいるわ。砂浜の上につくられた自転車と歩行者のための往復約５キロのコースに、サングラスにヘッドホン、おしゃれなウェアを着たランナーたちが。一人でもくもくと走る人、揃いのチームTシャツを着たランニング仲間、また、いかにも恋人同士という雰囲気の男女が走っているのも珍しくありません。
巨大なハンバーガーやケーキで脂肪を蓄え続ける人がいる一方で、健康な生活を追及するムーブメントが大きいこともアメリカの特徴。スーパー・マーケットにはありとあらゆるサプリメントや健康食品が並んでいるし、フィットネスクラブは朝５時から深夜までオープンしています。 ビーチを走る人が多いのも当然でしょう。海を見ながら潮風の中をランニングする贅沢……それだけで心も体も喜びます。
さて。少し走るのに慣れてくると、レースに出たくなるのが人情というもの。日本でも北海道マラソン、洞爺湖マラソン、青梅、兵庫・三田……と数々の大会に参加しましたが、アメリカでもできる限り、あちらこちらの大会をのぞいてみようと思っています。
手始めに、10月10日Sun. Long Beach Marathonのハーフの部に出場することにしました。インターネットで探せば、ざっくざっくと各地の大会が出てきて、そのままオンラインでエントリーできました。ロングビーチを選んだのは、“Southern
California`s most scenic Marathon、It`s a Beach Party”（南カリフォルニアで最も景観のいいマラソン。これは海辺のパーティーです）といううたい文句に惹かれたから。いったい、どんな景色が待っているのでしょう。
参加者は8日の金曜日もしくは9日土曜日、現地にゼッケンを受け取りに行かなければなりません。それだけ聞くとめんどうな印象を受けますが、ちゃんとメリットはあります。ゼッケン交換の会場では同時に“Marathon
Expo（マラソン博覧会）”が開かれていて、スポンサー企業による、ランニングやサイクリングのための新しい情報や商品のデモンストレーション、即売があります。ウエアやシューズが少しばかり安く買えるのは、日本と同じ。また、この日まで参加申し込みができ、レース・ボランティアに登録することもできます。やる気のある人はいつでもウエルカム、というわけですね。
昨年のホノルルマラソン、約25000人の出場者のうち約15000人が日本人だったのですが、市民マラソンブームは日本だけのものではありません。欧米にはマラソンが文化として根付いているのです。
レース当日。7時半という早朝のスタートでも、前日までに受付を済ませてあとはウォーミングアップだけでOKというのは、気分的にラクです。国家の斉唱と20回大会記念の2000ドルが当たる抽選が行われて、スタートラインについたランナーたちは、ノリノリ状態。そしてついにスタートの号砲！ 一斉に飛び出すのかと思うと、誰も前の人を押すなんてことはしません。実に平和的なスタート。市民マラソンたるや、本来こうあるべきなのでしょう。
コースに出てみると、まさに“Southern California`s most scenic Marathon”！ 今はホテルとして使われているクイーンメリー号、巨大な噴水を横手に見ながら、湾を横切る橋を渡り、砂浜の上につくられた道を4マイルほど突っ切ります。給水ステーションでは大人に混じってたくさんの子供たちが両手に紙コップを持って立ってくれていました。ペースが落ちてくると周りのランナーが「keeping,
Go ahead!」と励ましてくれます。ランナー同士でコミュニケーションしている姿があちこちで見られ、私もレース中に二人の方から「Join us」と、ランニングチームへの勧誘を受けました。
そんな楽しい時間を過ごしてゴールすると、きれいなフィニッシャーメダルが首にかけられました。海と砂浜とクイーンメリー号と高層ビル。ロングビーチを象徴する絵柄がカラフルに描かれたオリジナリティあふれるメダルをかけた完走者たちは、Finish line Festivalを楽しみます。生バンドがビーチソングを奏でる中、顔を塩だらけにした老若男女がベーグルやフルーツをほおばっていました。
数日後には大会ホームページに記録一覧がアップ。ハーフは約4100人、フルは約1600人が完走していました。
マイル毎の平均ペースと最終タイム、総合とクラス別順位のほか、Age-Graded Scorling という項目があり、私は68.95％でした。これは何かというと、World Association
of Veteran Athlete（WAVA）という団体が提案しているもので、簡単に言えば、年齢別・性別に設定した“最高記録”に基づくパフォーマンス達成度。同性で、1時間30分の24歳と1時間35分の50歳を比べると、後者の方がAge-Graded
Scorlingは高くなります。これだと、年齢を重ねるにつれてタイムは落ちていっても、スコアはキープも向上もする、というわけ。生涯ランナーには、これはうれしい基準です。「まだアメリカではこのスコアを出しているレースは少ない。他の国はよく利用している」と解説されていたので、日本でも取り入れている大会がたくさんあるのかもしれません。
すばらしい景観と、愛するわが街を訪れたランナーたちをもてなす地元の人々のホスピタリティを存分に味わえた、Beach Party。走りながらその街を知ることができるのは、市民レースの大きなたのしみの一つです。おそらく他のランナーたちと同じように、持ち帰った数々の案内を見比べながら、「次は、どの街を走ってみようか」と考えているところです。
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