スポーツはエンターテインメント。それが、大国アメリカのスポーツシーンのイメージではないでしょうか。メジャーリーグ、フットボール、バスケットボールにアイスホッケーの4大プロリーグやモータースポーツ、ゴルフetc……ファンは贔屓のスーパースターに入れ込み、驚異的なパフォーマンスに熱狂しています。では、そんなきらびやかな世界の下には、どんな草の根が広がっているのでしょう? スポーツ天国ロサンゼルスで、読んで聞いて見て体感して、レポートしたいと考えています。…が、なかなかいきなり選手育成の科学的システムに近づけるわけもなく…。
まずは身のまわりに何かヒントが落ちてないかと、街中を歩き回っているのですが、気づくのは、公園あればスポーツあり、ということ。小さな子供たちがバスケットの3on3や、フットボールのパス練習をしているし、週末になれば大人の草野球、子供のサッカーなど、試合に興じる声が聞こえてきます。中国人が多く住む地域では、朝早く公園に行けば、必ず太極拳をするグループを見ることができるとか…。とにかく、暮らしの中にスポーツが溶け込んでいる。スポーツは“見る”だけでなく“する”もの。そんな印象なのです。子供たちはまずスポーツを楽しむ、慣れ親しむ環境が与えられ、大人たちは日常のアクセントとして、カラダを動かす時間を大切にしているように見えます。
そんな中には、日本人の集団の姿もありました。
ラグビーをこよなく愛する男たち「Godzilla(ゴジラ)」です。アメフトの母国アメリカで、ラガーに会えるなんて!メンバーのほとんどが経験者。でも、やはり、米国でまた楕円球を追えるとは思いもよらなかったといいます。スポーツショップは街中にあふれているけれど、ラグビーグッズにはめったにお目にかかれず、用具はほとんど日本で買うとのこと。
現キャプテンの“コービー”ことシマダコウイチさんは、最初は現地人のチームでプレーし、このチームの存在を知って“移籍”。過日は、FOXスポーツ(TV)のラグビー番組に出演し、チームをアピールしてきたそうです。学生や社会人、年齢層も20代から40代、初心者から花園優勝経験者まで、さまざまなバックグラウンドをもちながら、アメリカの地で“ラグビー”をやろうと集った同志たちが、毎週日曜日、朝10時から南カリフォルニア・トーランス市の公園で練習しています。
もちろん大会にも参戦していて、今シーズンは「7`s(7人制)Rugby Tour in 2004」で、6月12日のラスベガス大会を皮切りに、サンディエゴ、ロングビーチ、イーグルロック、サンタバーバラに出陣。9月11日のサンルイスオビスポ大会が最終戦です。大会は朝から夕方まで。15〜20チームがトーナメント方式で優勝を争います。もちろん、日本人チームはGodzillaだけ。フォワードのじゅんぞうさんは、「当たりが強くて大変! ケガが絶えない!」と捻挫した足を引きずりながら苦笑しますが、巨漢を相手に果敢なプレーで、チームはどんどんファンを獲得しているようです。
異国の地でひとつの共通項のもとに出会い、時間を共有する勇敢なラガーマンたちに、最後に、あえて愚問をなげかけてみました。
ラグビーとは、あなたにとって何ですか?
すると、やや年長者風のハタノさんは言いました。
「合法的ドラッグ!」
ちょっと、ドキっとする物騒な表現かもしれないけれど、見事に、言い当てていると思いませんか?思い切り楕円球を追って、走って……これは健全な精神を保持する常備薬。
それが、このアメリカにスポーツがあふれている理由なのかもしれません。
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