突然ですが、エルカミノ・カレッジのクロスカントリー部に入ってしまいました。
8月30日、秋学期初日。陸上競技部のオフシーズントレーニングの入部テストに参加するはずが、コーチに競技歴を書いた用紙を見せると「テストは必要ない。すぐクロスカントリー部のディーン・コーチに会うように」と言われたのです。クロカンは9月頭からシーズンインするのに女子メンバーが足りず(5人1組で得点を競う)困っていたとのことでした。そんなわけで私は、何のこころの準備もないまま18、19歳のチームメイトにまじって、野山を走ることに…。草や枯葉枯枝、土や泥や石、ラフな地面で、しかも激しくアップダウンがあって、これは同じ“走る”でも、トラック・ランやロードレースとはまったく別モノです!
ところで、クロスカントリーというスポーツは日本でどれくらいポピュラーなのでしょう? 陸上競技の世界に親しんでいる人はもちろん知っているでしょうし、レースも開催されていますが、マラソンや駅伝の人気からすると、あまりに一般的な認知度は低いんじゃないかと思います。でも2006年の世界選手権が福岡で開催されることが決まっていますから、これからいろんなプロモーション活動があるかもしれません。
では、その予習ということで…
おこりは19世紀初頭のイングランド。“Hare(野ウサギ) and Hound(猟犬)”“The Paper Chase”(和訳・紙まきレース)という名で始まりました。このゲームは、最初の走者グループが紙をまきながら走ってコースを敷設し、次のグループがその紙が落ちているコースをたどって走る、というものだったそうです。1837年にラグビー校で最初の公式レースが開かれ、1876年には第1回全英選手権が開催されています。国際大会は、1898年にイングランドとフランスの間で争われたのが最初。1907年からイングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドにフランスが加わって年一度の国際大会が始まり、1920年代にはヨーロッパ各国が続々と参加しました。また五輪史の中にも1912年、1920年、1924年に登場しますが、それ以降は夏季競技として適しないとして行われていません。その後、IAAF(International Amateur Athletic
Federation)によって1962年に男子、1967年に女子の世界選手権を開催し、今日に至ります。
現在は、ディーン・コーチの話では世界一クロカンがポピュラーな国はアメリカとのこと。ここでは個人競技としてではなくチーム競技としての側面が重視されていて、秋になると毎週毎週各地で何十ものレースが行われます。クロカンが英国から米国に伝わったのは1878年。1887年に米クロカン協会が創設され、1880年に第1回全米選手権が行われました。またその年、ハーバード大学がトラック・長距離ランナーのオフシーズントレーニングとしてクロカンを取り入れたのを機に、そのコンセプトが全米の学校に広まったといわれています。
たいていの中学校・高校にはクロカン部があるそうで、チーム競技としてす。LAに来てから、体育のクラスメイトに“何のスポーツをしてきたか”という質問をすると“クロスカントリー”と答える人が何人かいて、陸上競技の中でもマイナーな種目としてしか認識していなかった私には、けっこうなカルチャーショックでした。
チームメイトたちもやはり中学・高校からクロカンを走っていて、ガタガタなダウンヒルもまったく怖がらずに駆け下りていきます。「ユリコ、走っている時はぶつかっても“ソーリー”って言わなくていいし、下り坂でアドバンテージをとらないとダメよ」と、彼女たちに注意されました。
IAAFの規定では、男子2000m〜12000m、女子2000m〜5000mとなっていて、アメリカのカレッジレベルでは女子は5000mが主流。この距離。短いようで長いようでなかなかよく計算された距離だと、走ってみて感じます。これ以上短いと巻き返しがしにくいし、これ以上長いと集中力が保つのが難しいでしょう。地面が悪いので、走るのに相当神経を使うのです。細いコースでは中距離走なみのボディ・コンタクトもありますし、全身の筋力と柔軟性、バランス感覚、そして度胸を必要とする、奥が深い競技。若いランナーの能力開発にもいいし、ゲーム性の高いランニング種目として、日本でももっと認知されるといいと思います。
競技会だけでなく、クロカンランナーのためのトレーニングキャンプも行われているようですし、日本から参加する道があるのかどうかも含めて、さらに調べてみたいと思います。
とりあえず私は、11月末の州大会まで、毎週レースで大忙しです。
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