今日1月21日は、ずっと楽しみにしていたプロボクシング・ビッグマッチが行われる日。ネバダ大学トーマス&マックセンターで、エリック・モラレス(メキシコ)とマニー・パキャオ(フィリピン)の世界スーパー・フェザー級(58.9キロ)二大巨頭がグローブを交えるのです。彼らにとってこれはリターンマッチ。第1戦はきわどい判定でモラレスが勝っていて、いわば因縁の再戦といったところ。このファン垂涎の”The
Battle”は、世界プロボクシング界が放つ2006年最初の巨大イベントなのです。
さて。この再戦開催が決まってからの私の懸案は、これをどうやって楽しむか、でした。
実は昨年3月に行われた第1戦は、迷いに迷った挙句に売り切れ寸前のところで150ドルのチケットを買い、ラスベガスMGMグランドに乗り込んだのです。しかし、さすが人気者同士の対決。会場は14,623人のファンでぎゅうぎゅう詰めで、席にたどり着くと、なんとそこは最後列!背中に壁の圧迫感を感じながらリングを見下ろすと、ボクサーは豆粒のようでした。天井から吊るされた大画面で見るしかないか…と思いきや、照明用のやぐらで画面がちょうど隠れてそれも見えない!
Oh my god…
反面、観客席がよく見渡せて、祖国を離れて生きるメキシカン、フィリピン人たちにとってこの二人のファイターはまさに”希望の星”なのだと実感でき、それはそれで、会場に行った甲斐があったと思えることではありました。
が、つまりは、よっぽど大金をはたいていい席を買わなければ結局、次の週に放送されるダイジェスト版で見直さなければならない、ということです。
選択肢は他に、二つ思い浮かびました。
一つは、ペイ・パー・ビュー(Pay per view)。番組ひとつを放映局から“買い”、自宅のテレビでゆっくり楽しむ方法です。
欧米は早くから有料テレビ(ケーブル、サテライトetc …)が普及して、アメリカでは4大ネットワークの無料ブロードキャストチャンネルのほかに多くの有料チャンネルがあります。たとえば私の自宅はケーブルテレビで、諸経費・税を含めて毎月66ドルほどかかりますが、HBO、ESPNなどの豊富なスポーツコンテンツを楽しむためには、洋服代を節約してもこれははずせません。おかげでHBOボクシングのレギュラー番組を欠かさず見ることができます。が、特別なビッグマッチは“ペイ・パー・ビュー”となり、この番組をいちいち“注文”しなければ見られません。『モラレス対パキャオ第2戦』視聴料は44.95ドル。チケットを買って会場に入るのと同じように、自宅テレビと会場をつなぐチケットを買うような感覚ですね。
もうひとつは、街なかのスポーツバーで盛り上がる、という方法。
日本でも世界のスポーツをテレビで上映している飲食店が増えていますね。私が住むLAには、そこらじゅうにそういうお店があります。年末のある昼下がり、ウィルシャー通りをジョギングしていたら、あるバーから歩道まで人があふれているので何の騒ぎかと聞いてみると、カレッジフットボールUCLA対USCのライバル対決の真っ最中で、店内のテレビで放送されているとのこと。まるでバー全体が会場の観客席と化しているようでした。ファンが集い、お酒や料理をつまみながら盛り上がる、というのも楽しそうです。こういうレストランやバーは、何も無断でスポーツ番組を流してお客を集めているわけではありません。飲食店専用の料金契約があり、お店は特別なプログラムを買って、4大スポーツのリーグ戦やカレッジスポーツ、格闘技などを上映しているのです。
帰り道、サンタモニカの大きなスポーツバーの入り口にモラレス対パキャオ戦のポスターが貼られていたので、フロントの人に尋ねると今日は、ボクシングを見るには20ドルのエントランス・フィーが必要で、B1がボクシング観戦専用フロアだそうです。
ペイ・パー・ビューにしてもスポーツバーにしても、私達はケーブルテレビ会社、レストランから放映局を通して、スポーツ界にお金をつぎ込んでいる、ことになります。体育の授業で聞いた“スポーツはアメリカ最大のビジネス”というフレーズ、これも末端の一例といえるでしょう。
さて実際、どうやって観戦したかと言うと、バーに行ってみようと思ったのですが、一緒にいくはずの友人が急病でドタキャン。大急ぎで家に帰り、ケーブルテレビ会社に電話をかけてペイ・パー・ビューを注文。家で一人さびしく…でも、セミファイナルもメインイベントも、大激闘で大いに楽しめました。でも次のビッグマッチの時は、スポーツバーでワーワー騒ぎながら、見知らぬファンとボクシング談義をしてみたいな、と思っています。
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