以前本欄で、“プチ・スポーツ留学のススメ”ということで、コミュニティカレッジ留学と部活への参加を提案しましたが、検討中の方もいらっしゃるでしょうか? 今回はその続編。私が留学を決めて一から準備を始めたのが2年前のちょうど今頃で、入学申請、TOEFL受験、ビザ取得とステップを踏んで8月末からの秋学期に間に合いましたから、今が決め時です。
秋学期のクロスカントリーからの流れでこの春学期、エルカミノ・コミュニティカレッジ陸上競技部・中長距離パートの一員になった私は、陸上王国アメリカの末端を観察しながら競技を楽しんでいます。
以前にもお伝えしたとおり、コミュニティカレッジというのは地域が運営する公立短大で、老若男女・人種を問わず、各自それぞれの目的をもって勉強をするところ。高校卒業したての若者たちは、4年制大学の3年次編入へのステップとして、学費が安いコミカレを利用するのが一般的です。が、部活動に目を向けると、2年しか活動ができないというデメリットがあるからでしょうか、競技レベルは高くありません。対校戦、選手権大会も、コミュニティカレッジ間のみの争いで、競技会ものんびりとしたムードです。参考までに北に比べてレベルが高いとされる南カリフォルニア地区の2006年春ランキング、種目別ベスト10の記録は3月26日現在、男子100m10秒46〜10秒92、800m1分55秒81〜58秒68、1万m31分10秒16〜33分21秒02、110mH14秒51〜15秒55、4×100mリレー41秒45〜42秒76 走幅跳7m14〜6m71、走高跳2m10〜1m94、砲丸投16m56〜13m84……、女子は100m12秒07〜12秒69、800m2分19秒96〜2分25秒00、1万m38分04秒29から41分25秒82、100mH14秒54〜16秒57、4×100mリレー47秒30から50秒93、走幅跳5m75〜5m08、走高跳1m65〜1m52、砲丸投15m39から11m39(http://www.directathletics.com/lists/track/23_186.htmlに全種目)
でも、毎週末試合を重ねるうちに、コミュニティカレッジ・アスリートにも、その先のチャンス、がちゃんとあることがわかりました。
コミカレのコーチたちは大学のスタッフと交流し、チームを4年制大の競技会に参加させる機会を積極的に探しています。さすがにUCLAやUSC、州立大などが集う大会はトップ・アスリートのパフォーマンスに観客が沸き、華やかで刺激的。チームメイトたちを見ていると(私も含めてですが…)、そういう雰囲気に混ざって、ここぞとばかりに張り切るわけです。自己ベストも出ます。というのも、大学に入って競技を続けたいと思っているコミカレ・アスリートたちにとって、ハイレベルを肌で感じたり大学の指導者たちに競技力をアピールしたり、コミュニケーションしたりする格好の場だからでしょう。
実際、私にも“お声”がかかりました。なぜか選手やコーチに囲まれていたひょろっとしたおじいさんが、私を見るなり、「ニホンジン?」と聞いてきたのです。「ワタシ、スコシニホンゴデキマス」と。
このおじいさん実は、ジェリー・リングレンという伝説的長距離ランナーで、東京五輪1万m9位、6マイルの世界記録保持者、NCAAタイトル11度、そして2004年にアメリカ陸上殿堂入りを果たした人物でした。
引退後ハワイに移り住み、ランニングチームの指導をしていた彼は去年、ハワイ大学陸上競技部(女子のみ)のアシスタントコーチに就任。同部を陸上競技・クロスカントリー部と改称させ、本格的な指導に乗り出したそうです。
「ハワイには日本人が大勢います。私は大学で日本人のサポートもしています」と、かなりの親日家のリングレン・コーチ。
チームに日本人はいますか、と尋ねると、
「それがまだいないんですよ。きみが来ればいい。フレッシュマン(1年生)でしょ? 第一号になれるよ」と誘われました。陸上部員としては1年目だけど、34歳だし、大学編入は考えてない、と私はお断りしましたが、本当にやる気のある日本人選手を待っていらっしゃるようす。
彼の信条は、「週50マイル走る選手よりも70マイル走る選手の方が強い。70マイル走る選手よりも100マイル走る選手の方が強い。とても簡単なことです」。トレーニングが厳しいのは疑いの余地なし、ですが、人柄はとてもハートウォーミング。選手との話を傍で見ていると、ほめてほめて引っ張る、そういうコーチです。
NCAAディビジョンIの中堅クラスの同校。シーズン中4度ほど、1週間程度の本土遠征を行うそう。そんな話を聞いているうちに妙に好奇心がそそられてきてしまいましたが…10年若かったら、と悔やまれます。
どなたか、ハワイ大リングレンコーチの日本人初の門下生になる方、いらっしゃいませんか? コミュニティカレッジで英語力や競技の力試しをしてからでもいいし、思い切って直接ハワイ大学留学も、あり、でしょう。
とってもエキサイティングで、タフで、味わい深い体験が、待っているはずです。
リングレン氏のホームページhttp://www.gerrylindgren.com/
ハワイ大体育会のホームページhttp://uhathletics.hawaii.edu/
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